好きな言葉、心に響いた言葉 パート1

心に響いた言葉


日々の生活の中で当たり前に経験する色々な人達との
会話やテレビ、ネット、書物、新聞、雑誌、手紙など
身近なところで感銘を受けたり、「ハット」とする言葉が
幾つかあります。
でも、その多くの言葉は長く自分の中にいるのではなく、
いつの間にか消えています。

言葉に対しての感性や感受性が豊かではない私ですが、
そうした多くの言葉の中でも消えずに長い間、私と一緒に
歩んでいる言葉があります。

『好きな言葉、心に響いた言葉』というテーマで2週に
わたって私の中で一緒に歩んでいる言葉のお話しをしたいと
思います。

―― 心に響いた言葉

『心に響いた言葉』ということですがその言葉をくれた人は、
学も名誉も財産もナイナイ尽くしの私の母親です。
見た目も、生き方も、贅沢することなしに生きてきた『昭和を
代表するようなおばちゃん』です。

その母親が育った場所は茶畑が一面に広がる山村です。
近くには大きな川があり、夏場の水遊びにはもってこいの
穴場です。
この川にはダムが設置されており、通常の時間帯はダム
から水が放出されていますがある時間帯になるとダムから
の放出が止まります。
放出が止まるとダムの下に作られたコンクリートの床に
浅く水が溜まり、深さ二、三十センチ程度のプールのように
なります。
そこには鮎や鰻が泳いでおり、笹で追い込んだりして鮎や
鰻を捕まえることもできます。

そんな大自然の中で育った母親が結婚し大阪で生活をする
ことになりました。
私の小さな時の記憶をたどっても母親が贅沢した記憶は
何一つありません。私達、子供のことで精一杯の生活だった
と思います。
私が大きく成った今も何かご馳走するから何が食べたいと
聞くと決まって「味噌ラーメン」と返ってきます。

見た目も小さく、普段は前に出ることのない控え目な女性
ですが、母親としては強く、当時は本当に背中が大きく
見えました。
そんな母親からの頂いた言葉が40年間いつも側にいます。

小学校2年生の時でした。一緒に遊んでいた友達が怪我
をし、そのことをいつどう母親に話しをしようかと悩んで
いました。
一緒に遊んでいたとはいえ、怪我をさせた責任と治療費で
家にも負担をかけてしまうという思いで一杯でした。
夕方一人椅子に座っていた私の側に母親が来て、
『あきら、お前の心はレースのカーテンやぁ。正直に生き
なさい。』と言われました。

もちろん、母親は友達の怪我のことを知っていた訳ではなく
私から何かを感じたようです。その後すぐに母親に事情を
話し、友達のお見舞いにいきました。
私が困った時や嘘をついている時は、表情や言葉からすぐ
分かるようです。ピノキオの鼻のようです。
嘘や隠し事をしていても自分が苦しいだけで何も解決
しない。いつかは分かる事だから、正直に生きなさいと
いう事でした。

レースのカーテンは母親だから私のことがよく分かるので
あり、他の人にはドレープカーテンかと思いきや、「すぐ顔に
出ますね。本当に分かり易いですね。」という意見が多く
…やはり、レースのカーテンのようです。正直に生きていこう
 と思います。

言葉は不思議な力を持っています。心が温かくなったり、
安らぎを感じたり、使い方によっては鋭い刃物になり一生
消えない傷を残すこともあります。

同じ言葉を聞いても、自分の体調や精神状態、誰が言った
かによっても感じ方やとらえ方が異なることもあります。
面白いですね。

『あきら、お前の心はレースのカーテンやぁ。正直に生き
なさい。』は、私にとっては宝物の言葉です。
これからも大切にしていきたいですし、私の息子は私以上に
薄手のレースのカーテンのようです。
私から子供達に引き継ぐ言葉にもなりそうです。

【次回予告】
次回はファンの方も少なくないと思いますが西堀栄三郎さん
のお言葉をかりてお話しをしたいと思います。

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