勇気と成長の鍵、ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)理論

「スター・ウォーズ」「ロード・オブ・ザ・リング」「マトリックス」「ロッキー」・・・世界でヒットしている物語に共通の理論がある事をご存知でしょうか。それが、アメリカの神話学者であるジョゼフ キャンベル氏が提唱した「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」という理論です。

(2020年11月16日 企画推進室)

ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)

ジョゼフ キャンベル氏は古今東西の神話に登場する数々の物語を研究し、そこに共通した流れがあることを発見しました。世界各国、様々な文化を持つ国で、どういう訳か共通して現れてくるこの流れは、人々の心を動かし、共感をよび、感動を生み出していました。

著書「千の顔をもつ英雄」の中で英雄の物語の基本構造を説明していますが、これを「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」と呼びます。

では、この「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」の流れを見てみましょう。

(「千の顔をもつ英雄」では8つの流れが英雄譚の王道だと紹介されていますが、脚本家のクリストファー・ボグラーが12のステップに進化させて「神話の法則」として出版しました)

1:日常

物語は日常的なシーンから始まります。この時点ではまだ何の問題は起きていません。

2:冒険への誘い

ここで主人公に対して新たな旅立ちへの誘いが訪れます。多くのストーリーでは強引に冒険に誘われます。ある物語では神様が、ある物語では使者が、ある物語ではお姫様が、という風に日常から非日常に誘われるのです。

3:冒険の拒絶

しかし、主人公は旅立ちに不安や恐怖を覚えます。しかし、未知への恐怖を乗り越えて旅立っていく段階へと入ります。

4:賢者との出会い

冒険へと旅立つ時に、師匠との出会いが訪れます。ドラゴンボールでは亀仙人、スターウォーズではヨーダ、ハリーポッターではダンブルドア教授でしょうか。

5:最初の関門の通過

いよいよ主人公が本格的に物語に関わっていきます。もう引き返す事ができない、というようなシーンですね。

6:試練、仲間、敵

主人公はたくさんの試練に立ち向かいます。そして、仲間や宿敵に出会う事になるのです。仲間から試練に立ち向かう勇気を得て、主人公は成長していくのです。

7:もっとも危険な場所への接近

主人公はもっとも危険な場所に接近していきます。危険であるとわかっていますが、それを乗り越えないとストーリーの目的は達成できないことも分かっています。

8:最大の試練

ストーリーのクライマックスです。いよいよもっとも危険な場所に到達し、最大の試練を乗り越えようとする場面です。

9:報酬

最大のチャレンジを乗り越えた時に主人公は報酬に値する対価を手に入れます。

10:帰路

報酬を手にした主人公は、帰路につくのです。しかし、多くのストーリーではまだ敵に追われていたり最後の危険が孕んでいる状況です。

11:復活

主人公が特別な体験から戻ってくることになります。ストーリーによっては最大のチャレンジの中で死に直面し、死んでしまった主人公や死に際の主人公が息を吹き返すという場面です。ハリーポッターでも主人公が一度死を体験し、そこから復活するようなシーンが描かれています。

12:宝を持っての帰還

主人公が日常に戻ってきます。これで物語は完結を迎えるのです。

 

 

いかがでしたでしょうか?これが「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」の流れです。ヒットした多くの物語が意図的に、もしくは無意識にこう構図になっている事がわかるのではないでしょうか。

スティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、フランシス・コッポラといった世界的に著名な映画監督のヒット作も、このパターンを踏襲しているそうです。

ヒーローズ・ジャーニーから学ぶこと

別にヒットの法則をお伝えしたくて「ヒーローズ・ジャーニー」をご紹介した訳ではありません。

なぜ、国も文化も歴史も違う国々で、同じような体系の神話物語が語られているのでしょう。

それは、ヒーローが必要だったからではないでしょうか。大昔、一歩集落から出れば、別の集落までの道のりは危険に満ちていました。夜の森は野獣が闊歩し、食料や水、多くの危険と隣り合わせの旅だったでしょう。

しかし、それでも人類が繁栄するためには、旅立っていく存在が必要だとわかっていたのだと思います。そうして、英雄譚は心震わせる物語として語り継がれ、多くの名もなき英雄たちが、集落から旅立っていったのでしょう。

人間は弱いものです。冒険には導いてくれる師が、共に旅をする仲間が必要です。そして、試練を乗り越える事で、報酬を得るのです。それは共に旅した仲間かもしれません。強くなった自分自身かもしれません。

確かに冒険は危険があるでしょう。そのため不安や恐れがあって当然です。しかし、旅立たねば英雄になれないのです。かけがえのない宝を手に入れる事ができないのです。そして、勇気をもって旅立った若き英雄には、必ず導いてくれる師の存在があり、共に旅する仲間の存在があります。

皆さんは今、大きな試練を乗り越えようと努力を重ねている最中かもしれません。新しいプロジェクトを任された、新しい技術を身につけないといけない、顧客へのプレゼンテーションを控えている。

私たちは日々たくさんの試練に向かってチャレンジを行なっています。こういった試練の一つ一つが皆さんの人生のヒーローズ・ジャーニーかもしれません。

また、新しい一歩を踏み出す勇気が持てないという、ヒーローズ・ジャーニーの最初のステップに立っている人もいるかもしれません。しかし、勇気を持って冒険の旅に出た人は、例え目的を達成できなかったとしても何かの報酬が得られるものなのです。

最後に、「プランド・ハップンスタンス」理論について書いた、以前の記事をご紹介いたします。

流されない生き方をするための5つのスキル~プランド・ハップンスタンス理論に学ぶ/企画推進室

冒険の旅こそ、「偶然の出来事」を「プランド・ハップンスタンス」に変えるという事だと思います。

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