あなたは怒った時、どうしますか?

私事ではございますが、過去2社の面接で「あなたは怒った時、どうしますか?」と聞かれたことがあります。皆さんはどのように答えられるのでしょう。

今や「アンガーマネジメント」という言葉も世間に浸透してまいりましたね。ざっくりとまとめると「怒りをなくすのではなく、上手に怒りの感情を選択しましょう」というものです。調べてみると「なるほど~」と頷かされます。何故この話題なのかと申しますと、私はあまり怒りの感情に対して自覚がなく、2社ともに答えに詰まってしまったことがあるからです。1社目では言葉にできず「ふだん怒ることはありませんか」と促されてから「はい、あまり物事に対して怒る必要性を感じません」と答えたでしょうか。2社目ではヘルプデスク業務でしたから、具体例として「些細な問合せが頻発して時間を奪われることにつながった時、怒ってしまうこともあるかと思いますが、いかがですか?」と聞かれていました。その際は「重大な障害でなくてよかったと受け止め、よくある質問事項としてまとめて公表するなど、時間削減に努めます」と回答したことを覚えています。そんなに皆さん怒っていらっしゃることが普通なのかな?と、10年以上は「怒る」ということについて、ゆっくり嚙み砕いている気がします。

どんな時に怒るのでしょうか。仮想の例にはなりますが、「先方の指定で約束していた時間から40分連絡もなしに待たされた。いつも時間を守る人なのに、信頼を裏切られて悲しい」「後続作業が控えているのに、提出〆切を破られてしまい自分の余裕がなくなってしまった。部署間で板挟みになって精神的な疲労がたまって辛い」「信頼する上司がWeb会議中に謂われのない批難を受けた。部下として何もできなくて悔しい」というようなものでしょうか。相手の都合や価値観などに振り回されてしまった結果として、まずは自分自身の中に1次的な感情が生まれるものですよね。「怒る」ということは、実は自分から他人に向ける2次的なアクションのことを指し示します。つまり、「私の価値感や考えを理解して、その通りに行動してもらいたい。もしくは結果がほしい」という要望を、「1次的な感情エネルギーのコントロールがままならない状態で表現している」ということなんです。

 

相手に対して何かを改善してほしい。そうなった時に取る手段として、どのような「怒り方」が適切なのでしょうか。思うに、ここが「アンガーマネジメント」の本質なのではないでしょうか。

自分たちを理解してもらうためには、先に相手のことを理解するよう努めた方が物事はうまくいきやすいです。まずは相手の事情を問いましょう。「お約束の担当者様と連絡が取れません。何かご事情があるのでしょうか」と問えば、「大変申し訳ありません。確認したところ、交通事故に巻き込まれてしまい、携帯電話を破損して公衆電話もない環境で、自社にも御社にも連絡が一切できなくなっていたようです。ご迷惑をおかけしてしまい、誠に恐れ入ります」と返答があるかもしれません。こうお聞きすると、のっぴきならない事情だったことから「お怪我などはございませんでしょうか。こちらはけっこうですので、落ちつかれましたら日を改めてお越しください」と心配する気持ちに変化するのではないでしょうか。

何も事情を聞かずに「なんて失礼なんだ!どうなっている!こんな企業とは今後取引を打ち切らせてもらいます!」と怒鳴ってしまっていたら、どんな結果になるでしょうか。「なんて余裕がなく、一方的で、自分勝手な企業担当者なのだろう」と目されて、他社から自社の評判も落ちてしまえば、社内の評価も下がってしまうのではないでしょうか。あまり合理的とは言えませんよね。この例ですと事情を知った上で「怒る」という選択肢そのものがなくなりましたが、その他はいかがでしょう。

〆切を守ってもらえない場合、自部署にも、後続の部署にも迷惑がかかってしまいます。損害が出てしまうこともありえる事例です。ここは「どのような理由で設定されている〆切なのか」を理解してもらうことや、関係者に対策を知ってもらうことで協力を仰ぐことができる部分になってきます。「いつもなんとかしてくれているからいいでしょ、こっちだって忙しいんだから」と平気で待たせる人は、意外と「〆切設定の目的や理由を知らない」ということがあります。相手の事情だけを呑むのではなく、相互理解をする工程が必要だったりするのです。

では、何かしらの被害を受けている場合はどうでしょう。謂われのない批難を受けたとしたら、風評被害に当たりますよね。この場合こそ、即座にその場で「違います。私の話を聞いてください」と冷静に抗議をすべきですね。時間が経ってしまうと、誤解を受けたままになってしまいますから。状況によっては、怒っても当然かもしれません。ただし、こちらも相手との信頼関係や、被害の程度などに応じて、その場では飲み込むことも必要な場合があります。話が通じない人を相手にして時間を無駄にすることもあるでしょう。そして何もその手段は「怒る」ことに限定しなくても、望む結果は得られるのです。わざわざ不快な感情を選択して、人間関係を壊すくらいなら「怒る」必要性はありません。

ただし、これらの対応ができるのは精神的な余裕があるからこそと言えます。3日間徹夜で心身ともにへとへとな人に対して何かよくないことをしたときに「そんなに怒んないでよ!」と伝えたとして「あなたはキチンと寝て起きてるでしょ?!なんで気遣ってくれないの?!」と返されても仕方ない部分があるのではないでしょうか。だって、わざわざ怒らせちゃっているのですから。もし、いつも怒っている人がいるとしたら、何かその人が精神的に追いつめられていないかケアをすべきでしょうね。

エクステックでは怒っている人を見たことがありません。これは「がんばりすぎず、いい状態を長く続けましょう」という方針のおかげなのかもしれませんね。

 

(2024年5月8日 杉本)

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