プロティアン・キャリアの時代/企画推進室

「プロティアン・キャリア」とは、アメリカ心理学者であるダグラス・ホール (Douglas T. Hall) によって1976年に提唱された理論です。変化の激しい現在において、重要なキャリアモデルを 「変幻自在なキャリア(Protean Career) 」 と名付けています。

(2021年4月26日 企画推進室)

プロティアン・キャリア

そもそもキャリアとは

ブログでも、過去何度か「キャリア」について取り上げました。

国家資格キャリアコンサルタントと企業内での役割について/企画推進室

パラレルキャリアのすすめ/企画推進室

人生100年時代の働き方/企画推進室

 

「キャリアとは、生涯にわたる期間において、仕事に関する諸経験や諸活動と結びついており、個人的に知覚された一連の態度や行動である」(Hall,2002)

「キャリア」の前提として、以下の事が挙げられます。

  1. 組織階層の上方への移行することがキャリアであるという視点はとらない。
  2. キャリアにおける成功と失敗は本人によって評価される。
  3. キャリアには主観的側面と客観的側面があり、両方を考慮する必要がある。
  4. キャリアとはプロセス(経験の連続)である。

 

ほとんどの人は働かなければ生きていけません。

つまり、自分の仕事を選ぶというのは、生き方そのものを選択する事に直結します。そういう意味で、キャリアとは人生とほぼ同じ意味だと言えるかもしれません。

プロティアン・キャリアとは

では、プロティアン・キャリアとはどういった理論でしょうか

「プロティアン・キャリアとは組織によってではなく個人によって形成されるものであり、キャリアを営むその人の欲求に見合うようにその都度方向転換されるものである」 (Hall, 1976)

「プロティアン(Protean)」は、ギリシア神話に登場するプロテウス神が語源になっています。プロテウス神は自らの姿を変幻自在に変えることのできる神で、ここから転じて「変幻自在な」「多方面の」という風に訳されます。

プロティアン・キャリアとは、組織内でのステップアップに重きを置いた従来のキャリアにかわり、地位や給与ではなく、自己成長や気付きといった心理的成功を目標としています。

  •  キャリアは組織によってではなく、個人によって管理される。
  •  キャリアの目標は個人の心理的成功である。

 

プロティアン・キャリアと伝統的キャリアの対応表 (Hall, 2002)

項目 プロティアン・キャリア 伝統的キャリア
主体者 個人 組織
価値観 自由、成長 昇進、権力
移動頻度 高い 低い
尺度 心理的成功 地位、給料
姿勢 自尊心、自分を尊敬できるか 他者からの尊敬、組織から尊敬されているか
アイデンティティ 自分は何がしたいのか? 自分は何をすべきか?
アダプタビリティ 仕事関連の柔軟性(測度:市場価値) 組織関連の柔軟性(測度:組織での生き残り)

 

プロティアン・キャリアを説いたホールは、二つのコンピテンシーを打ち出しています。それは、「アイデンティティ」と「アダプタビリティ(適応能力)」です。

アイデンティティとは、自分が自分をどのように見ているか。価値観、趣味、能力、一生を通した自己概念。

アダプタビリティとは、変化への適応スキルと適応モチベーションの事です。

 

ただ環境に左右され流されるのではなく、自分のキャリアを主体的に変形させるのがプロティアン・キャリアです。

そして重要な事は、組織の中での地位や給与といった客観的で定量的な指標ではなく、個人の中で感じられる仕事の充実感であり、「自分は何をしたいのか」「社会に対し何ができるのか」という自己への意味づけだと言われています。

ウィズコロナ、アフターコロナの変化の激しいこれからの時代、プロティアン・キャリアの働き方を一緒に考えて行きませんか?

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