行間の読める技術者に。

鉄橋

言われた事は出来て当たり前です。私たちはプロフェッショナルなんですから。

以前、テレビで自動車の製造現場の現状を報告する番組がありました。その中で、中国製など海外の安い部品に対抗できずに取引を失っていく業者が多いなか、安定した受注を獲得している、ある業者が紹介されていました。

車のダッシュボードなど、プラスチック部品を作っている会社でした。

ダッシュボードとは・・・。説明しなくてもわかりますよね。

その部品メーカーは、自動車メーカーから渡された設計書をまず精査しました。その時、設計書通りに作成すると、車に据え付けた際、手を離すとダッシュボードが下に脱落しまうのではないか、ということが設計上分かりました。これでは取り付けのネジも取りにいけませんし、支えている片手がふさがれ組み立ての作業効率が落ちてしまうことを、「部品の設計段階」で発見したのです。

そこでこの部品メーカーは車のフレームにわずかに引っかかる「出っ張り」を見えない部分に設け、脱落しない構造に変更しました。少し力を入れれば簡単に外れてしまうけれど、手を離しても落ちない程度の工夫を設けたのです。

脱落してしまう事が分かれば、それを脱落しない設計に変更するのは簡単です。でもそうすると設計そのものの変更を余儀なくされます。ダッシュボードとしての機能は問題がないのにです。

日本人は独創的な発想は苦手だといわれていますね。確かにそう思いますが、工夫しそれ以上のものを作り上げるといった「改善」といった事は、非常に得意な人種だと思います。

私たちIT業界でも、製造工程を海外で行うということが盛んに行われています。近い将来には「すべて海外で」なんてことになってしまうかもしれません。

与えられた仕事を確実にこなし、お客様から良い評価をもらう。これもすばらしい事ですが、これだけでは、海外や他の業者との差別化は図れません。

お客様の要件を確実に引き出し、運用や使う立場をも考慮に入れた提案を行う。設計書の内容を理解し、お客様がどんな機能を求めているかを考え、把握した上で改善すべき内容がないか、より効率的なロジックは存在しないかを追求する。仕様書をコーディング前にチェックし、仕様の不具合を事前に改善する。

依頼された仕事に対し、期待された仕事以上の事ができて、初めて「プロフェッショナル」と言えるのではないでしょうか。

ダッシュボードの部品メーカーは、設計書の行間を読み、そこに書かれていないユーザーである製造現場での要求を汲み取り、独自に考え製品に反映することで、お客様より評価、信頼を得ているのだと思います。

依頼された仕事に対して、常に「行間を読む」努力をしてください。「行間を想像」してください。そして「行間を読む癖」をつけてください。それが、自分の幅を広げ、仕事の面白さにつながり、お客様への良き提案となり、より良いシステム作りへと発展していきます。

私たちは「プロフェッショナル」なんですから。

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