「モンティ・ホール問題」というのをご存知でしょうか。数学的に正しい答えになるにも関わらず、一般の人はもちろん数学者すら「その答えは正しくない」と物議を醸しだした問題です。私たちの中にある常識というのは時として、論理的に正しい答えとは違う答えを導き出す事があります。そして感情が、常識に合致する答え以外を否定してしまうのです。そういう脆さを意識していたいと思わせる、この問題についてご紹介します。
(2021年1月18日 企画推進室)
モンティ・ホール問題とは
アメリカでモンティ・ホールが司会を務めるTV番組でのゲームです。
1、プレイヤーの前に閉じた3つのドアがあります。
2、1つのドアの後ろには当たりである「新車」が、2つのドアの後ろには、はずれである「ヤギ」が用意されています。
3、当たりのドアを選べれば「新車」が手に入ります。
4、まず、プレイヤーが1つのドアを選択します。
5、司会のモンティが残りのドアのうち、ヤギがいるドアを1つ開けます。
6、プレーヤーは、最初に選択したドアをそのまま選ぶか、開けられていないドアを選びなおす事が可能です。
さぁ、あなたならどちらを選びますか。どちらを選んだほうが「新車」が当たりやすいと考えますか。
おそらく、多くの方が二つのドアのうち片方が新車、当たる確率は2分の1だ、と考えるでしょう。
アメリカでも、そのままが良いか選びなおすべきか、というのが長らく議論の的になっていました。
多くの数学者にすら批判された正解
「世界一IQが高い人間(IQ228)」としてギネスブックに認定されていたMarilyn vos Savantという女性が、読者からの質問・相談に答えるというコラムでこの問題に対する答えを出しました。
その衝撃の答えとは
「ドアを変えることで正解の確率が2倍になる」
というものです。
「え?」というのが多くの方の反応ではないでしょうか。
当時も同じような反応で、数学者・統計学の博士号保持者を含む、世界中からの反対の意見が10,000通以上届いたそうです。
この答えを理解しやすく説明してみます。
3つの扉のうち、
・1つの扉を開ける権利
・2つの扉を開ける権利
だと、どちらの権利を選択しますか?
もちろん、後者ですよね。前者は当たる確率3分の1ですが、後者は3分の2。
最初に扉を選んだ段階だと当たる確率3分の1です。
次に、今選んでいる扉から残りの扉の2つ開ける事ができる権利に変更する事ができるとしたら?
しかも、2つの扉の内ハズレの扉は教えてもらえるとしたら?
何となくわかってきませんか?そう、確率3分の2に変わるんです。
少しだけルールと順番が違いますが、最初のゲームは、この確率と同じ事が起こっている訳です。
モンティ・ホールがハズレの扉を開けたため、二つの扉の比較のように思えますが
1つの扉を選ぶ権利か、2つの扉を選ぶ権利(ハズレの扉は意図的に明けれているため、残りの扉の確立が2倍になる)か、の選択なんです。
結果、扉を選びなおしたほうが2倍当たりやすいということですね。
これは、後にコンピュータを使ったシミュレーションでも確率的に正しい事が証明されました。
詳しくは省きますが、これは「選択バイアス」の典型的な問題らしいです。
ともかく、世の中にある様々な情報の中には、「一見正しそうな事でも正しくない事がある」という事ですね。