「コーチング」という言葉を聞いたことはありますか?何となく聞いたことはある、という人は多いのではないでしょうか。人財開発技法のひとつに分類されるのですが、普段会社で行っている先輩から後輩への指導や、上司から部下に行っている指導とは何が違うのでしょうか。
多くのプロコーチが、「コーチングで人生が変わる」と力説します。そして、私自身も「コーチング」を学び、「コーチング」の凄さを実感しています。今回はそんな「コーチング」について、少しだけ説明したいと思います。
(2019年11月18日 企画推進室)
「コーチング」の由来
スポーツの世界で、「コーチ」という言葉をよく聞くと思います。昨今「コーチング」と言えば「稽古をつける、指導する」といった意味合いで使われるようになりましたが、由来として「コーチ(Coach)=馬車」が元となっており、馬車が「人や物を目的地まで届ける」というところから来ていると言われています。
「コーチング」と似た言葉、そして対になる言葉として「ティーチング」があります。
なんとなく似たような言葉ですよね。
どちらも、対象となる人(=クライアント)に対して働きかけて成果を出す、という意味では同じく「人財開発技法」になると思います。
しかし、その働きかけ方に大きな違いがあります。
「ティーチング」の働きかけ
「ティーチング」とは、「クライアント」に知識や方法を伝える事で理想の状態に近づける技法です。日本の教育では、教師が一方的に教科書の内容を生徒に伝えるという形式で授業を進める、まさに「ティーチング」がメインとなっていると言えるでしょう。
この指導を行う人を「ティーチャー」と言う訳ですね。
知識や方法を伝える事で相手のスキルを上げていく訳ですから、自然と「ティーチャー」が話す時間が多くなります。場合によっては「ティーチャー」が延々と説明を行い、「クライアント」が延々と話を聞くだけ、という事もあるでしょう。
「クライアント」のスキルを上げるには非常に効率的な技法である一方、「コーチング」に比べると「クライアント」のモチベーション低下の可能性が高いと言われています。
「コーチング」の働きかけ
では、「コーチング」はどういう働きかけをするのでしょうか。コーチングを行う人を「コーチ」と呼ぶのですが、「コーチ」は知識や方法を教える事はしません。本来「クライアント」には無限の可能性があると信じて、その可能性を引き出す事で望む理想に近づける事が「コーチング」の目的となります。
「コーチング」では主に「クライアント」に話してもらいます。「コーチ」は話してもらうための質問を行う事で「コーチング」を進めていきますが、話をするのはあくまで「クライアント」が中心です。
「クライアント」に対して「コーチング」を行う事を「セッション」と呼びますが、「セッション」を通じて、「コーチ」は「クライアント」の中にあるリソース(資質)に気づかせます。そして、「理想の状態」と「現状」との違いを理解してもらい、その差を埋めるための「自発的な行動」を引き出します。
「ティーチング」と「コーチング」の違い
「ティーチング」と「コーチング」の違いを簡単にまとめると次のようになります。
- ティーチングは上下関係、コーチングは対等。
- ティーチングは伝える、コーチングは気付かせる。
- ティーチングは受動的(指示待ち)、コーチングは能動的(自発)。
- ティーチングはモチベーションを下げ、コーチングはモチベーションを上げる。
どちらが正しいという訳ではなく、それぞれにメリット・デメリット、得意・不得意があります。例えば一定の知識を身につけさせるためには、「コーチング」より「ティーチング」の方が効率的です。一方で「ティーチング」ではモチベーションを下げる可能性が高くなるため、この二つを上手く組み合わせる事が望ましいと言えるでしょう。
しかし、「コーチング」を行うためには高度なスキルが必要であり、中途半端な方法では逆効果になる事があるため注意が必要です。
コーチングセミナーでコーチングのスキルを学んだ上司が、コーチングの技法を真似て「初めから答えが決まっているような目標」を部下の口から言わせようとする、と言った例をよく聞きます。これは「クライアント」から引き出すという「コーチング」の形を真似ただけの「なんちゃってコーチング」であり、逆効果となってモチベーションを下げる事になりかねません。
こういったケースでは、まず目標をすり合わせた上で、「目標を達成するために」という点について「コーチング」を行うのが効果的でしょう。
今回は「ティーチング」と「コーチング」の違いについて、簡単にお話しさせていただきました。
「コーチング」の具体的なやり方について、そして「コーチングで人生が変わる」といったコーチングの効果については、また、次の機会にお話ししたいと思います。