20年後、私たちの働き方はどのように変化しているか。長寿化の進行により、100年以上生きるこれからの時代、どう生きていくべきなのか。リンダ・グラットン著「ワーク・シフト」、「ライフ・シフト」から、これからの働き方について考えてみたいと思います。
(2020年10月12日 企画推進室)
ワーク・シフト/何が働き方を変えるのか
テクノロジーの進歩やグローバル化、社会の変化に伴い、
- 24時間休みのないグローバル化とテクノロジーによりいつも時間に追われ続ける
- 核家族化、離婚の増加など家族のあり方の変化などで、ほかの人と直接対面して接する機会が減り孤独感が強くなる
- テクノロジーによる雇用喪失や、グローバル化により、才能とやる気と人脈が経済的運命の決定要因となり、勝者総取りの社会となる
といった暗い未来像と
- イノベーションはコラボレーション的・ソーシャル的性格が強くなる
- 仕事、社会奉仕、育児、地域活動など、生活のさまざまな要素のバランス重視の生き方を選ぶ人が増える
- 世界中で何十億人もの人たちがミニ起業家として働き、ほかのミニ起業家とパートナー関係を結んで、共存するエコシステムを築くようになる
と主体的に築く未来像などが描かれています。
ワーク・シフト/どのように働き方を「シフト」するか
ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
広く浅い知識や技能を蓄えるゼネラリストを脱却し、専門技能の連続的習得者への抜本的なシフトが必要です。
終身雇用の契約が崩れ始めたいま、ゼネラリストがキャリアの途中で労働市場に放り出されるケースが増えています。「なんでも屋」はウィキペディアやグーグルアナリティクスなど、知識や分析を手軽に提供するテクノロジーと競わなければなりません。これからの時代は機械によっても代用されにくい技能が必要となってきます。
孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
昔は人的ネットワークが自然に形成されるのに任せておけばよかったが、今後は意識的・主体的な選択と行動が不可欠です。安らぎと活力を与えてくれる「自己再生のコミュニティ」を築くために、意識的に努力しなくてはなりません。
強固な人間関係をはぐぐむことができれば、大きなエネルギーを得ることができます。ただし、物質的な豊かさを重んじるあまりに、成長と意義と友情をないがしろにしないことが必要です。
大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
「仕事の最大の目的はお金を稼ぐこと、人生の目的はそのお金で消費すること」という発想から脱却しなくてはなりません。目指すのは、すべての時間とエネルギーを仕事に吸い取られる人生ではなく、もっとやりがいを味わえて、バランスの取れた働き方に転換することです。
シフトを行うとは、覚悟を決めて選択することです。ボランティア活動や長期休暇を取る代わりに高給を諦める選択をしたり、リスクを承知の上でミニ起業家へ転身したりする。昔は企業が社員の代わりにすべてを決めていたが、今後は自分の働き方を主体的に選ぶケースが増えてくるという事です。
100年以上生きる時代をどう過ごすべきか?
これまで多くの人々は「教育→仕事→引退」という3ステージの人生を歩んできた。しかし、寿命が延びれば、70代、さらには80代まで働くことが当たり前となっていきます。また、仕事のステージの長期化に伴い、ステージの移行を数多く経験する「マルチステージ」の人生に突入します。
多くのステージ移行を経験することになる時代では、「何を大切に生き、何を人生の土台にしたいのか」がより大切になってきます。
見えない資産
家族や友人関係、知識、健康といったものは、お金に換算できない「無形の資産」です。無形の資産は、それ自体が有意義な人生に不可欠であるだけでなく、有形の金銭的資産の形成を助けてくれます。100年ライフを過ごすうえでは、両方の資産のバランスをとり、相乗効果をねらう必要があります。
無形資産を以下のように分類します。
- 長年かけて培ってきたスキルや知識といった、生産性や所得、キャリアに役立つ生産性資産
- 肉体的・精神的健康や、友人や家族との良好な関係など、人に幸福感をもたらし、やる気をかき立てる活力資産
- 人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力である変身資産
この3つの「見えない資産」に投資を続け、自らを再創造(リクリエーション)することが、充実した100年ライフを送るためのカギとなります。
移行期間と社会制度の変化
マルチステージの人生では、一ヶ所に腰を落ち着けることなく、身軽に探検と旅を続け、幅広い針路を検討する「エクスプローラー(探検者)」、組織に属さずに、自由と柔軟性を重視して小さなビジネスを起こす「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」、異なる種類の仕事や活動に同時並行で携わる「ポートフォリオ・ワーカー」といった新しいステージが登場します。
しかし、ステージ間の移行回数が増えていくため、移行期間に向けた事前の準備が欠かせません。移行期間中は、主に活力資産と生産性資産への投資が行われるが、金銭的資産が減ることは避けられないからだです。
また、こうした新たなステージの出現により今までの企業の人事制度や、教育や労働、結婚といった社会制度も変化を強いられることになるという事です。
これからの働き方・生き方は、今までの先人が作ってきた枠組みの中で考えるのではなく、こういった変化を積極的に取り込んでいく必要がなるのではないでしょうか。