「心理的安全性」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。Google社が、「心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである」と発表したことで注目されたキーワードです。言葉の響きから「何を発言しても否定しない」というルール作りに走る事がありますが、それは大きな勘違いかもしれません。
(2021年3月15日 企画推進室)
心理的安全性はぬるま湯ではない
「心理的安全性」とは、ハーバードビジネススクール教授のエイミー・C・エドモンドソン教授のスピーチやGoogle社がチームを成功へ導く鍵として紹介したことで注目を集めた心理学用語で、「職場で誰に何を言っても、どのような指摘をしても、拒絶されることがなく、罰せられる心配もない状態」のことをいいます。
しかしこの用語は「会議での発言は自由に行い、誰の発言も罰さない」というルールを作る、とは違う意味を持っています。
心理的安全性を初めて提唱したのは、エイミー・C・エドモンドソン教授の言葉を引用してみます。
“A shared belief held by members of a team that the team is safe for interpersonal risk taking.”
(このチーム内では、対人関係上のリスクをとったとしても安心できるという共通の思い)
安全な環境を作ろうとするリーダーは、往々にして深く考えず 誰がどんなリスクをとっても安全な環境にしようとします。
しかし、リスクを恐れないメンバーが出てくると、その行動にたいして他のメンバーが不安になってしまい、逆に何か言ったり行動したりすることが怖くなるという負の連鎖が生まれる事があります。
突き詰めていくと、「心理的安全性」は信頼関係に行きつくと思います。
例えば誰かと仕事をするとき、その人に対して完全な信頼を置いているとき、その人の発言を遮ったり、非難する事はないでしょう。
心理的安全性は、この信頼関係がグループになったというだけだと思うのです。
単に「何でも発言できる場を作る」だけではダメで、グループ全員が信頼に足る人でなければなりません。
ある人がリスクをとる行動を取ったとしても、その人を信頼できる、グループ全員がそういう信頼関係でなければグループとしてリスクを取ることはできません。
「会議での発言は自由に行い、誰の発言も罰さない」というルールを作るというのは、ルールを作らないといけないという点で、すでにその信頼関係が築けていない訳です。
異なる意見を発言する、意見が対立する事自体は、心理的安全性とは関係ありません。本当の心理的安全性とは、お互いに思いやりを持って相手を気づかう気持ちを持ったチームとなる事だと思います。
そして、ルールを作るという事とは真逆の考え方で、正にリーダーシップが問われるのかもしれません。