価値観を増やす

意外と「価値観を増やす」という選択肢があることに気づいていない人は多いと思うこの頃です。

10代の若者(Aくんとします)から「友達同士のケンカを仲裁してきた」とお話をしにきてくれたことがあります。「どういうことがあったの?」と聞くと、ちょっとしたすれ違いからギクシャクしていた様子を見て、間を取り持とうと行動したとのこと。結果としてお友達同士は謝罪しあって和解にはつながったらしいのですが、どうもAくんは本当にそれで良かったのか納得できていない様子で「意見を聞かせてほしい」と頼ってきてくれました。私から見たAくんは、血気盛んで正義感が強く、曲がったことが大嫌い。お困りごとによく身を投じて戦っている印象がある子です。今回は「やり方が気に食わなかった」と思い出すだけでも憤る有様。ところが、説明をしてくれたその「やり方」も、見方をひとつ変えたらそんなに悪くない内容でした。よくよく聞いてみると、Aくんは言葉では「ふたりの仲裁をした」と口にしていたのですが、目的が「自分の価値観に相手を染めあげて服従させること」になっていたのです。

当事者同士の諍いではなく、三つ巴になっていたのですね。望んだ結果を得られたはずなのに、後味の悪さが残ったのでしょう。Aくんの良心が「問題を振り返って、価値観を増やそう」と経験値を積んだ大人に話を聞きに行くという行動を取らせたようです。大人としては頼ってもらえてうれしい反面、学ばされる出来事だと感じましたね。「別の角度から見たら、こうは受け取れないかな?どう思う?」「君がいないどこかで、別の何かがあったかもしれないことは想像した?」と、何か気づきがあればよいなと質問を繰り返してみると、Aくんなりに色々考えていました。結局その場で納得はできなかったようですが、きちんと自分の頭で考えられる子ですから、きっと5年後くらいには響いてくるだろうと思っています。

価値観の増やし方は、それぞれだと思います。人から話を聞く、違う文化や環境に身を置いて体感する、本を読む……学ぶということは多角的な視野を持つことにつながりますね。決してこれまでの価値観を捨てる必要はありません。増やせばよいのです。故きを温ねて新しきを知る。価値観を増やせば、柔軟に対応できることも増えていくのではないでしょうか。

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